セクシュアルマイノリティについて、「異性と恋愛する方がいいと思うよ」「そのくらい我慢しなさい」とアドバイスを受けることも少なくありません。
しかしここまでで述べた通り、同性愛者をはじめセクシュアルマイノリティは、自然に生まれ、自然に恋をしたり、しなかったりします。自分の意思には全く関係ないので、コントロールすることはできません。
にも関わらず「やめなさい」と言われるのは、同性愛などはポルノの世界のもの・悪い趣味という誤った認識や、たばこやお酒などのように努力すればやめられる、変えられるものだという考えがあるのではないでしょうか。
典型的な異性愛の男性、女性向けに、例え話をしましょう。
あなたは、指導教官の下、大学で同性愛や性別違和について研究しているとします。同じゼミにはあなたが思いを寄せる人もいます。
ある日教官に言われました。「後天的に同性愛者になるか研究したいから、今後は同性と付き合ってくれ」
あなたは心から同性愛者になれると思いますか？ 好きな人のことを忘れられますか？
またあなたの思い人はこのように言われました。「性自認が矯正できるか研究したいから、今後は異性装をして異性の生活してくれ」
あなたはその実験はうまくいくと思いますか？ その実験を、好きな人にさせたいですか？
ちょっと極端な話ではありますが、おそらく答えはいずれも「No」になると思います。
あなたが男性・女性であることや、男性・女性らしく振舞うこと、異性を好きになることは、あなたが決めていることではありません。努力で変えられるものでもありません。
一時的には我慢して自分を偽ることはできるかもしれませんが、あなたの心が変わるわけではありません。同じことが、セクシュアルマイノリティにも言えるのです。
性に関することは、日本ではタブー視される傾向があります。しかし実際には、人間が生まれ、育ち、生きていく中で、性の問題ほど密接に自分自身に関わってくる問題はありません。
「生」は、「性」を切り離すことができないのです。
「そういう趣味なの？」「治しなさい」「同性愛なんてやめた方がいい」「異性と試してみたら？」
ここに来てくださっているあなたは、そんなことは言わないかもしれません。
しかし、こういった言葉は、先ほどの例え話のような空想の世界のものではありません。
現実に、多くのセクシュアルマイノリティがかけられたことのある言葉です。
